Cases事例紹介

事例紹介広陵町(奈良県) 様

地域住民との対話と、産官学連携によるエビデンスに基づく高齢者福祉を

奈良盆地の中西部に位置する広陵町では、通いの場評価支援サービス「通いの森」を活用し、「通いの場」でのデータ収集と、産官学連携によるデータ分析を介護保険・高齢者福祉施策に活用しています。

広陵町福祉部地域福祉課
広陵町の課題について

広陵町規模の自治体では、限られた職員数でいかに効率的に業務を行うかが常に大きな課題です。
介護分野では平成27年度(2015年)の介護保険法改正を受けて、「在宅医療・介護連携推進事業」の実施に伴う事務作業の増大が、現場の職員にとって非常に大きな負担でした。
また、中核となる病院が町内になく、訪問診療や訪問看護などのサービス提供事業者も少ないという事情があり、近隣自治体との連携は不可欠でした。

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広陵町役場
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広陵町介護予防リーダー(KEEP)の皆さんの存在について

広陵町では介護予防の担い手として、ボランティアである「広陵町介護予防リーダー」を平成26年度から養成しています。この広陵町介護予防リーダーは、Koryo Elderly Encouragement Projectの略として「KEEP」の愛称が付けられています。
養成講座は町内にある畿央大学の協力を得ており、このKEEPの活動は地域包括ケアの担い手として、平成27年度(2015年)に「奈良介護大賞2015」を受賞しました。
令和8年度(2026年)現在で12期生の養成となり、実稼働で70名を超えるKEEPの皆さんは一般的な行政ボランティアの域を越えており、多方面で地域を支える「広陵町の宝」と言える存在になっています。
例えば、お住まいの地域で「通いの場」をゼロから立ち上げ運営するといった介護予防の普及・啓発活動に加え、自ら民生委員・児童委員や他の地域づくり活動にも積極的に関与いただいています。
KEEPの皆さんは、KEEPの活動がご自身の生きがいになっていると仰っており、このような地域の展開や、SNS等を活用した情報発信もあってか、現役世代からのKEEP養成講座へのご応募も近年は増えています。

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総合保健福祉会館「さわやかホール」
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「けあプロ・navi」から「通いの森」導入へ

※文中のトーテックアメニティは、以後「トーテック」
こうして地域包括ケアが求められ、多職種連携と広域連携、自助・共助・公助を効率的・効果的に運用する仕組みを構築する必要性が高まり、近隣自治体で実績があった「けあプロ・navi」の導入となりました。
そして、「情報の更新作業」という行政側の大きな課題をトーテックの情報センターが請け負うため、常に最新の情報がインターネット上で誰もが確認できる体制が整いました。
医療・介護施設に加え、通いの場やサロン等の情報も順次追加しており、「医療・介護・地域つながりネット」として、より生活に密着した広陵町の社会資源を検索できるプラットフォームになっています。

一方で着実に拡大を続ける介護予防活動については、その効果検証への模索が続いていました。
地域住民の皆さんの健康維持や介護予防、介護給付費の適正化に、通いの場やKEEPがどう寄与しているかといった客観的な裏付けが難しいのです。
行政側では、年2回の体力測定やアンケートの結果を前後比較するのが精一杯であり、「医療・介護・地域つながりネット」を始め各種のデータ蓄積はあっても、その分析への知見は不足していました。
そうした課題意識から「通いの森」を導入し、科学的根拠に基づいた介護予防事業の取り組みをすすめていくことになりました。

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インタビューをお受け頂いた
今西 課長 兼 地域包括支援センター長
(けんこう福祉部 介護福祉課 地域包括支援センター)
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インタビュアを務めたひとり
日向 社会保障企画担当
(ソリューションビジネス本部 公共システム事業部)
KEEPの皆さんの高い責任感と強い信頼関係が好循環へ

通いの森は事業分析のためのデータ収集として、通いの場で端末を使ってチェックイン(参加記録データ収集)を行うことが重要です。
このチェックインを通いの場の代表者やKEEPの皆さんに依頼するためには、IT機器やアプリ操作の説明を行い、苦手意識と不安感を払拭することがとても重要な課題でした。
そこで私たちは端末の操作方法を伝えるだけではなく、「なぜデータが必要か、どのようなことに活用するのか」という目的の共有から始めました。
データの蓄積と分析が介護予防活動の成果を「見える化」し、それが将来的に健康寿命の延伸や介護保険料の増加を抑えるといった日々の暮らしを守ることに繋がる説明を丁寧に重ねました。
ご理解を頂いた通いの場の代表者には、まずはタブレット端末を預かっていただき、KEEPの皆さんに通いの場参加者のチェックインを行っていただきました。
その後、好事例として他の通いの場にも紹介し、KEEPの皆さんの間で「自分たちにもできそうだ」「自分たちもやってみよう」という前向きな空気感を作る様に心がけました。

現在では、個人のスマートフォンに通いの森アプリをインストールすることも可能ですが、こちらからお願いする前に自らアプリをインストールするKEEPさんもおられるほど積極的です。
また、端末やアプリの操作方法については、KEEPの皆さん同士で教え合ってもらう「住民から住民へ」という形も大切にしています。
これらもKEEPの皆さんの高い責任感と、培ってきた信頼関係に支えられていると実感しているところです。
もちろんトーテックさんにも頻繁に通いの場で、直接フォローを頂いていることも、関わる皆さんの安心感とスキル向上に大きく寄与していると思います。

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本間「けあプロ・navi」担当営業
(ソリューションビジネス本部 公共システム事業部)
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松久「通いの森」担当営業
(ソリューションビジネス本部 公共システム事業部)
産官学連携の内容と成果について

令和4年度(2022年)の第9期介護保険事業計画等を策定するにあたり、厚生労働省が推進する介護予防・日常生活圏域ニーズ調査(以下、ニーズ調査。広陵町ではJAGES(※)が実施する『健康とくらしの調査』)と合わせ、通いの場で蓄積されたデータの分析をJAGESに委託しました。

※JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study)は、日本老年学的評価研究の略称。一般社団法人日本老年学的評価研究機構として、30を超える大学や国立研究センターなどの研究機関に属する研究者が健康長寿社会をめざした予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした研究を続けています。

具体的には、ニーズ調査の結果と通いの場で蓄積したチェックイン履歴や体力測定データなどを、個人特定ができないよう加工しJAGESに提供することによる、専門的な分析の依頼です。
分析結果は、JAGESで研究されている先生方から直接、KEEPの皆さんに説明する機会を設けました。自分たちの活動がデータとして蓄積され、その裏付けをもって専門的な評価をいただくことはKEEPの皆さんにとってもモチベーション向上に大きく繋がりました。
令和7年度(2025年)の第10期計画策定に向けても、同様に実施しました。
令和7年度は加えて、ニーズ調査の回収率が78%を超えるという驚異的な数字を記録できたことも、通いの場やKEEPの皆さんを通じて地域住民との信頼関係を示す大きな成果だと感じています。

また、ニーズ調査の結果から、広陵町は認知症施策において、取り組めることがまだまだあると分かりました。これは現場の実感とも一致していました。
この結果を踏まえ、協定を締結している千葉大学予防医学センターの研究者の先生方から支援を受け「認知症施策推進計画」の策定に向けて取り組みを始めました。
令和7年度(2025年)は、多職種によるワーキングチームを立ち上げ、認知症になっても自分らしく暮らし続けられる広陵町を目指して、課題や調査のための指標などについて協議しました。
ニーズ調査では通いの場の参加者にも調査対象を広げ、町独自の調査項目を追加するなど、介護予防事業、認知症施策だけでなく、後期高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施についても貴重な助言をいただいています。

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トーテックアメニティへの期待について

他自治体での成功事例や成果の共有ですね。どのような工夫から成果を上げているのかをご紹介いただけたり、広陵町の取り組みも紹介していただけたりすると事業の質の向上にも繋がるので嬉しいです。
また、人事異動に伴い、これまで進めてきた事業を円滑に後任者へ引き継ぐことも行政の課題でもあります。
これまで築き上げてきた体制や取り組みの推進力が継続できるように、経験の少ない担当職員に対しては御社から積極的に情報提供やフォローをいただきたいですね。
単なるシステムやサービスの提供にとどまらず、広陵町の地域づくりを共に進めるパートナーとして、引き続き密なコミュニケーションが継続できることを願っています。

担当者コメント

産官学連携によって、事業効果が見える化できた有効事例になりました。
その効果を住民の方々に公表することにより、更に住民の方々のモチベーション向上に繋がっていることに、本サービスのやりがいを感じています。
今後も広陵町様のご期待に沿える様、広陵町様と大学・研究者の皆さんと情報交換を重ねてまいります。

トーテックアメニティ株式会社
ソリューションビジネス本部 公共システム事業部
日向

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広陵町様の取り組みは自治体通信にも掲載されました。
お客様紹介
広陵町(奈良県) 様

広陵町は奈良盆地の中西部にあり、近畿圏の中核都市である大阪市へは約30kmの直線距離にあります。
町は、箸尾駅を中心として発展してきた北部地域、地元の靴下産業が息づく西部地域、のどかな田園風景が広がる東部地域、閑静な住宅街が広がる真美ヶ丘ニュータウン地域と大きく4つに分けられます。
生産量日本一を誇る靴下は国内シェアの約4割を占め、プラスチック産業も盛んです。
農業ではイチゴやナスが特産として知られており、竹取物語の伝承がある讃岐神社や国の特別史跡である巣山古墳など、数多くの史跡も有しています。